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Passed Days

合図

「すみません。日本の方ですか?」
異国の地で聞く久しぶりの日本語は、僕をはっとさせた。

「そうですけど。」
「よかった。実は、XXXに行きたいんですけどよく分からなくて。」
「ああ、XXXですね。ぼくもこれから行くところなんです。この近くみたいですよ。」
「そうなんですか!奇遇ですね。」
「ですね。」
「あのー。」
「はい?」
「もしご迷惑じゃなければ、一緒に行きませんか。実は、海外に慣れていなくて不安で・・・。」
「分かりました。ご一緒しましょう。ぼくもこの国は初めてなんですが。」
「そうなんですか?旅慣れているみたいだから声をかけたんです。」
恥ずかしそうにそう言って、彼女は笑った。

「じゃあ、行きましょうか。」
「はい。」
「それにしても、よく僕が日本人だって分かりましたね。」
「ここら辺にいるアジア人は、中国人か日本人がほとんどだし日本人っぽいなかって。」
「分かるもんなんですね。」
「分かりますよ~、何となく。」
「僕に無いスキルだ。」
「スキルだなんて大げさな。」

確かにその世界遺産は、素晴らしかった。
いつもの旅と違うところは、その素晴らしさを共有できたことだ。
彼女は英語がほとんど分からないということなので
ガイドの話す英語を訳し、彼女に伝えその世界遺産をまわった。

「楽しかったですね!」
スタンドバーで、彼女は興奮した面持ちでエスプレッソを飲んだ。
「ですね。一人旅は初めてですか?」
「えーとね。実は一人旅じゃないの。」
「あ、そうなんですか。友達と?」
「新婚旅行・・・。」
「あ、それはおめでとうございます。」
「あんまりおめでたくないかも。」
「え?」


結局、彼女が滞在する日数に合わせてぼくもその国に滞在した。

密会。
彼女が逢いに来て。
愛に狂う。

そんな生活を何日も続けた。

「彼も私も、お互い引き返せないところまで来ちゃったから・・・。だからこうしてこの国に来たの。」

僕の汗をぬぐって彼女はそう言った。

「彼は私に興味はないことは分かってる。でも寂しい・・・。」

泣くなんて卑怯だ。
僕には何もできないし、何も与えることができないのに。

「僕はその人のように大きな家も、お金も、豊かな生活も何一つ与えることはできない。
ただ僕にできるのは、こうして話を聞くことだけだ。
それがとても悔しい。」
「それだけで十分。だからもう少しそばにいて。」

よくある話なのだろうか。
旅先で男女が意気投合してベッドを共にし、お互いを語り合う。

平凡な僕と、彼女の複雑な事情。
こんなことは、どのガイドブックにも書いていなかった。

「そろそろ部屋に帰らなきゃ。」

一足先に彼女は帰国する。

「日本に着いたら連絡してね。待ってるから。」
「待って。何か決めなきゃ。」
「え?」

「逢う時の合図。」




The inspiration was received in ”合図”

合図 song by Takashi Utsunomiya.
# by matatabi_tamachan | 2012-05-16 23:57 | Passed Days

Just Be Friends

今日こそ、伝えよう。
ぼくの口から。

なんのことはない。
ただ友達に戻るだけだ。

言えばいい。
ただ、一言、「ごめん。」と。

そう言い聞かせて、彼女に電話した。

彼女の優しさに甘えて、ここまで来てしまった。
でも、はっきりとさせなきゃ。

きっとまた泣かせてしまうことだろう。
でもこれが最後だ。



# by matatabi_tamachan | 2012-03-05 21:27 | Passed Days

砂の果実

当時のぼくが、今の僕を見たらどう思うだろう?

悲しくて生きる気力をなくしてしまうかもしれない。
# by matatabi_tamachan | 2011-08-06 00:18 | Passed Days

蝿の王

時々、この本を読む。

その度にぼくの中の純粋な凶暴さ、内なる暗黒が現れる。
苦しくなる。

読むのをやめればいいのだろうけど、ページを読む手が止まらない。
何度も読んでいるというのに、涙があふれるのだ。
# by matatabi_tamachan | 2011-03-22 23:13 | Passed Days

fragile

壊れものを扱うようにそっとさわる


壊れものを扱うようにそっと包む


だけど途中からそんなことどうでもよくなる

荒々しくなる
# by matatabi_tamachan | 2011-02-16 21:15 | Passed Days



泣くもんか

by matatabi_tamachan